松竹座の7月大歌舞伎(5代目中村雀右衛門襲名披露)前回の続きをレポします。
前回の記事はこちら
襲名披露された中村右衛門さんが遊女のお染役で出演されている鳥辺山心中です。相手役の半九郎は片岡仁左衛門さんです。美男美女の道行です。
鳥辺山心中
半九郎が片岡仁左衛門さん。遊女のお染は中村雀右衛門さん。
将軍に御供して京都に来ている半九郎ですが遊女のお染に出会い惹かれあって良い仲になっています。
お染にとっては初めてお店に出た日に江戸から出てきた旗本、菊池半九郎の相手に選ばれたのです。初のお客が半九郎だったわけです。
お染さんの雀右衛門さんは可愛らしい女の人を仁左衛門さんはかっこいい男の人を。歌舞伎の所作は優美で本当に素敵です。
お染の境遇を気の毒に思っている真面目な青年の半九郎です。そして、自分以外の客をとらせないように店に通っています。
正月も近い日の夜にお染は内緒で父親に会いにいきます。
それは半九郎とお揃いの晴れの小袖を受け取るためです。お正月にお揃いの晴れ着を着るため、父親に頼んでいたのです。
父が帰った後に会いに来た半九郎ですが、急に将軍が江戸に帰ることになって半九郎も帰らなくてはならなくなったことをお染に知らせます。
京のうぐいす
半九郎は近日中に京を去らなくてはなりません。家庭の事情で遊女になったお染さんを可哀そうに思っている半九郎です。
そこへ友達の坂田市之助が遊女を連れてやってきます。お酒の席となりますが、半九郎は家宝の刀を200両で売りたいと相談をします。売ってお金を作って貰うように頼むのですが。
驚いたのは市之助です。半九郎は「京のうぐいすを買いたいのだ」と言います。市之助は「そのうぐいすを江戸の連れていくのか?」と尋ねると「いや、かごから放してやれば良いのだ。おおかた古巣に戻るだろう」と答えます。
しかし、市之助は、武士の魂を売ってまではいけないと話にのりません。
市之助の弟源三郎がたずねてくる
そうこうしていると、市之助の弟源三郎がたずねてきます。この弟は兄が遊ぶのは半九郎のせいだと思っているのです。そして半九郎に怒って文句を言います。
はじめは相手にしなかったのですが酔いも手伝って怒りが込み上げてきます。
源三郎の「侍の面汚し」に激高し刀を取って座敷を飛び出していきます。本当にひつこく言われ続けるので堪忍袋が切れてしまうのですね。
お染と死出の道行に行きます
四条河原で果たし合いをしている半九郎と源三郎です。暗い河原であまり人もいない夜中。
お染は心配して後を追って来ましたが半九郎を見つけた時はもう源三郎は切られて息絶えていました。半九郎は親友の弟を切ってしまったのです。
潔くその場で切腹をするという半九郎ですがお染は一緒に死なせて欲しいと頼みます。そして2人は正月の晴れ着を着て手に手を取って鳥辺山へと向かいます。
本当にちょっとした行き違いで大変なことになってしまうのですね。雀右衛門さんと仁左衛門さんお二人ともとっても美しかったです。
芋掘長者
2015年の8月歌舞伎座の納涼歌舞伎で籐五郎を橋之助、冶六郎を巳之助で上演されました。この「芋掘長者」は故、三津五郎さんの持ち舞踊でした。平成17、19、20年の舞台では籐五郎を三津五郎、冶六郎を橋之助で上演されました。
踊りの苦手な男の困った末の大一番
松ヶ枝家では息女緑御前の婿選びの舞の会を開きます。緑御前に思いを寄せている芋掘籐五郎は友達の冶六郎と舞の会に現れます。
ちっとも舞が出来ない籐五郎のために舞が上手な冶六郎が面を付けて途中で入れ替わって踊ります。
あんまり見事な踊りだったので感心した緑御前は面を取って踊るようにお願いします。どうしよう、困りますね。
このときの困ったときに見せる芋掘り踊りです。ユーモアたっぷりの名人がみせる踊りですね。
平成17年に歌舞伎座で45年ぶりに復活させた十世坂東三津五郎の思いのこもった作品だそうです。
踊りの名人がわざと下手におどるのが見どころ。冶六郎の踊りのふりをワンテンポずらせて真似をする。本当に名手が下手なふりをするのは難しいでしょうね。
今回は籐五郎は中村橋之助、冶六郎は中村錦之助でした。ユーモアたっぷりの踊りを見せて頂きました。